最高裁判所第一小法廷 昭和49年(オ)2号 判決 1977年2月17日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人桑江好謙の上告理由について
原審が適法に確定したところは、(一)上告人は所論の大仲宗根家の戸籍上、その相続人として記載されているものではなく、(二)上告人はみずからが大仲宗根家の家督を相続したと主張しているわけでもなく、(三)上告人は戦後本件土地につき自己の名義で所有権申告をしてその旨の認定を受け、大仲宗根家の位牌とともにこれを管理しているが、それは上告人みずから又は近親者一同が上告人を大仲宗根家の真正な家督相続人と考えたためではなく、終戦後の混乱した情況下で真正な家督相続人が判明するまでの間、その者のために一種の事務管理として右管理をしてきたものにすぎない、というのであり、右の事実関係のもとにおいては、上告人が被上告人らの先代盛義の家督相続を争つているとしても、被上告人らの本訴請求は家督相続回復請求にあたらず、上告人の消滅時効の主張も理由がないといわなければならない。これと同趣旨の原審の判断は正当であり、所論は原審の認定しない事実を前提とし、又は独自の見解に基づいて原判決を非難するものにすぎず、所論引用の判例はいずれも事案を異にし本件に適切ではない。それゆえ、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 団藤重光)